プロップファームとは、外部の資金を充てず会社の資金のみで取引を行う投資会社のことです。
最初は欧米を中心に広まったビジネスモデルで、リーマンショックをきっかけに日本でも注目を集めている形態です。
個人トレーダーにとっては資金面を会社負担してくれるので損失リスクがない、また個人では調達が難しい大金での運用も可能になるというメリットがある魅力的な仕組みです。
そこで、今回はプロップファームの特徴やプロップファームを利用する方法について具体的に解説します。
プロップファームは会社の資金で取引できる会社のこと
プロップファーム(Proprietary Trading Firm)とは、会社の自己資金を使ってFXなどの金融商品売買を専門に行う投資会社のことを指します。
個人投資家から運用資金を預かって運用するヘッジファンドに対し、会社資金だけで運用するのがプロップファームの特徴です。
プロップファームで運用を行うトレーダーは「プロップトレーダー」と呼ばれ、自己資金ではなく会社の資金を使って取引し、利益の一部を報酬額として受け取れる仕組みです。
プロップファームと個人トレーダーの最大の特徴は、損失リスクの有無と報酬額が挙げられます。
- プロップファーム:報酬は利益の一部と少ないが、損失は会社が負担してくれる
- 個人トレーダー:利益のすべてが自分が受け取れるが、損失のリスクは自己責任
個人トレーダーは「ハイリスクハイリターン」で、利益が出たときの利益率が高いものの損失はすべて自分で負担しなければなりません。
一方、プロップファームは「ローリスクローリターン」、報酬は利益の一部なので少ないですが損失したときは会社が負担してくれるのでリスクを少なく運用できます。
プロップファームが注目される背景
日本では普及が進んでいないプロップファームですが、海外とくに欧米では取り扱う業者が増えている人気なビジネスモデルです。
注目されるようになったきっかけは、2008年のリーマンショックです。
リーマンショック後、多くの金融機関はコスト削減やリスク回避のため、ディーリング部門の縮小やトレーダーの解雇を行いました。
そこで行き場を失ったトレーダーたちが注目した仕組みが「プロップファーム」です。
トレーダーは自己資金を必要としないプロップファームを新たな場所として集まり、結果としてプロップファームの認知や普及が広まっていったのです。
プロップファームの報酬の仕組み
プロップファームで受け取れる報酬は、トレードの運用益の25%~50%の報酬額が多いです。
たとえば報酬額40%のプロップファームで500万円の利益を得た場合、200万円(500万円×40%)の報酬を受け取れます。
気になる収入面を見ていきましょう。
Comparably(匿名で実際に働く人の意見をまとめているサイト)によると、米国のプロップトレーダーの収入はおよそ250~2,000万円と幅があり、平均では500万円ほどとされています。
プロップトレーダーの収入は、トレードでどれだけ運用益を出せるか、また利用する会社によっても大きく異なるのが現状です。
プロップファームでトレードするメリット
プロップファームでトレードするメリットを、個人トレーダーの特徴と比較して見ていきましょう。
個人トレーダーよりも長期間成功しやすい基盤が整えられる
プロップファームは、個人トレーダーとしてトレードするより相場に生き残り続けやすいというメリットがあります。
よく「個人投資家は9割は負ける」という言葉がある通り、個人トレーダーは失敗することが当たり前とされています。
しかし、プロップトレーダーになればプロップファームにあるリスク管理、経験豊富なプロップトレーダーからアドバイスを受けられることもあり、大きな失敗をしにくい環境が整っています。
プロップファームによっては、基本的なトレードスキルを学べる機会も用意されているので知識を深めることも可能です。
プロップファームはリスクが少ないので積極運用も可能
プロップファームは、損失リスクを全額会社が負担をしてくれるので積極運用が可能です。
個人では財布に限界があるトレードでも、プロップファームなら会社が資金を用意してくれるので大金運用も可能になります。
また、証拠金が多いことからハイレバレッジを利用しなくても大きな報酬が狙いやすいので、リスクを抑えることもできます。
プロップファームでトレードするデメリット
プロップファームは損失リスクがなくトレードできるのが最大のメリットですが、当然デメリットも存在します。
成果が出なければ無給や契約打ち切りになることも
プロップファームでは基本的に歩合制(成果報酬)が多いので、一定の利益が出なければ報酬はもらえません。
また、ほとんどのプロップファームは決まった単位(1日や1ヶ月など)で最大損失率を設けています。
仮に最大損失率を超えた場合でも損失を被るリスクはありませんが、運用益を減らされたり契約を打ち切られることは理解しておきましょう。
完全に個人の判断でトレードできない
トレーダーの多くは独自の運用方法があることが多いですが、プロップファームでは完全に個人の判断でトレードすることはできません。
プロップファームごとに決められた手法、資金管理などのルールを守りながら、利益を出していくことが求められます。
ルールを破ると、運用の禁止や契約の打ち切りにつながることもあるので注意しましょう。
プロップファームでトレードする方法
欧米に比べると、プロップファームでトレードできる企業はそこまで多くはありません。
プロップファームでトレードするための方法は、以下の2つです。
- 金融機関の投資部門に就職
- 個人でプロップファームと契約する
それぞれの方法について、具体的に解説します。
金融機関の投資部門に就職
銀行やヘッジファンドといった金融機関には、プロップファームの部門が作られていることもあります。
そういった部門がある企業に入社できれば、企業に勤めながらプロップトレーダーとして働くことが可能です。
しかし、日本ではプロップファーム部署がある企業は少なく、狭き門になることは間違いありません。
基本的には学士号を取得しているもしくは金融機関で一定の経験がないと就職のチャンスはないと考えた方が良いでしょう。
また、企業に入社するということは安定した収入を得られる一方、歩合給がもらえないこともあり、利益を出してもリターンが少ないというデメリットもあります。
個人でプロップファームと契約する
個人でプロップファームと契約してプロップトレーダーになるのが現実的な方法です。
プロップファームと契約するには、一般的に以下のようなデータをまとめた書類を求められます。
- トレード経験
- トレード経験年数
- トレードの習熟度
- 過去の取引記録
審査がクリアできれば、トレード経験や習熟度に合わせて教育制度や実践へと移ります。
初心者の場合は、1ヶ月~2ヶ月のデモトレード期間で基本的なトレードスキルやリスクマネジメントを学び、一方、経験豊富なトレーダーと認められれば、すぐに実践で会社の資金運用を任されることもあります。
ただし、プロップトレーダーになってもすぐに稼げることは少ない点には注意が必要です。
個人でプロップファームと契約する場合は歩合制が多いため、最初は無給となることを覚悟しておきましょう。
プロップファームは個人トレーダーにメリットの大きいビジネスモデル:まとめ
今回は、プロップファームの特徴や具体的な収益の方法について解説しました。
プロップファームは、会社に所属することから一定のルールに則ったり、収益が出ない場合は無給となるリスクもあります。
しかし、個人トレーダーにとって足かせとなる損失リスクがなく、大金での運用が可能になる画期的なビジネスモデルなのは確かです。
個人では難しい大金運用や他のトレーダーとの情報交換もできることから、挑戦することで新たなトレーダーへの道が切り開けるのは間違いありません。
トレードスキルに自信がある人は、プロトレーダーとしてプロップファームへチャレンジを検討してみてはいかがでしょうか。